
マッフレイ
イタリア/ピエモンテ

伝統的なワイン生産者の家系から兄弟で始める新たな物語
1927年から続く家族経営のワイナリー出身の兄ステファノと弟アンドレア。2021年、彼らは自分たちのワイナリー”Maffrei(マッフレイ)”を設立し新たな旅を始めた。Maは彼らの苗字Mascarello(マスカレッロ)の頭文字であり、ffreiはイタリア語で兄弟を意味するFratelliから取られている。弟のアンドレアは学校で醸造と栽培を学んだ後、ラ・モッラ村を代表するロベルト・ヴォエルツィオやチェザーレ・ブッソーロで働き経験を積んだ。その後、マスカレッロ家のワイナリーから独立する形でマッフレイを設立。兄ステファノは結婚を機にブラジルへと移住したため、主にアンドレアがワイナリーの舵取りをしているが、ステファノも畑作業や醸造が忙しいタイミングでピエモンテに戻る生活をしている。「全てを自分たちで行うのはとても大変だけど、その分自分たちのやりたいこと、目指すものを追求できる。それは当たり前なことではないと思う。」とアンドレアは語る。

ピエモンテの新時代:世界が賞賛する若手ワイン生産者たち
イタリアで最も偉大なワインのひとつとしてその名声を確立しているピエモンテ・バローロ。現在ピエモンテにおいて多くの新世代が台頭し、世界中が注目している。最もダイナミズムな産地のひとつと言える。彼らは偉大な先人たちから受け継いできたピエモンテ、バローロという伝統の価値を守るだけでなく、さらにその先の次元へと昇華しようとしている。ピエモンテの偉大な生産者の下や世界中で働いた経験はもちろんブルゴーニュなど他の生産地にも積極的に足を運び、様々な意見や手法を取り入れている。マッフレイもブルゴーニュの生産者との交流が深く、よくブルゴーニュを訪れている。同時に彼らのワインに魅せられたブルゴーニュの生産者も頻繁にマッフレイを訪ねてくるという。様々な経験や考えや咀嚼したアンドレアは自身の哲学を「大事なことは土壌に語らせること、土地を表現すること。」と説明する。そのため畑ではオーガニック栽培を実践し、収穫後に翌年のために有機肥料を施肥するのみ。土壌の柔らかさを保つために機械は使用せず、すべての作業を手で行う。「目指しているのはとげとげしさのないエレガントなスタイル。昔ながらの伝統と現代の技術を融合させたい。」と語る。

地元の人にとって大切な品種ドルチェットから最高品質のワインを
マッフレイが現在所有する畑は家族から引き継いだものや新たに購入したもの、レンタルした畑を含め約3.5 haで、3種類のワインを生産している。ラ・モッラ村で最も標高の高いグネゾッティのネッビオーロを使用したランゲ・ネッビオーロ、ドルチェットの産地として名高いディアーノ・ダルバで樹齢40年以上のブドウ樹を使用したランゲ・ドルチェット、そして2023年ヴィンテージから買いブドウを使用したランゲ・ビアンコを造り始めた。ネッビオーロのクオリティはもちろんだが、ドルチェットの品格の高さには驚かされた。「地元の人にとって大切な品種であり、バローロボーイズの登場によって影の存在になってしまったドルチェットのポテンシャルを示したい。」高品質で凝縮感のあるブドウを収穫するためにキャノピーマネジメントに焦点を当て、ブドウ房の約半分をグリーンハーベストで切り落とす。その中でも最高品質だけのものを使用し、残りは他のワイナリーへと販売している。


生産者ストーリー
【Bros in Wine:兄弟で始める偉大なワイン生産者への道】
収穫を終え、シーズンの終了を知らせるかのようにブドウ畑の葉が色を変え始めた2023年11月、ピエモンテに2週間ほど滞在しワイン生産者を訪問した。その旅の中で最初に訪問したのがラ・モッラ村に居を構え、2021年からワイン造りを開始したマッフレイだった。約束の集合場所に行くとすらっとした背の高い爽やかな若者がいた。彼が1997年生まれのアンドレアだった。訪問を終え、冷めやらない興奮とともに少し後悔をした。旅の最初にこれだけ素晴らしいワインに出会ってしまったら、その後に訪問する生産者に対するハードルが高くなってしまう…
マッフレイは2021年に兄ステファノと弟のアンドレア2人で設立したワイナリー。彼らはもともと1927年から続くワイナリーの家系ということもあり、若いころからワインに触れていた。「バローロは15,16歳の頃から飲んでいて自分たちにとって一番馴染みと愛着があるワインなんだ。」自然とワインの道を選択しアンドレアは地元の高校および大学で栽培と醸造を学び、卒業後はロベルト・ヴォエルツィオやチェザーレ・ブッソーロで働き経験を積む。2020年に家族内で問題が発生し、ステファノとアンドレアそして彼らの両親は家系を離脱することになる。「幼いころから自分の家系がバローロを造っていることは理解していた。それでも、バルトロ・マスカレッロやリナルディ、ジュゼッペ・マスカレッロ、ジャコモ・コンテルノなどのトップと言われる生産者のバローロを飲むと次元が違うと感じていた。そして自分自身が造りたいワインは彼らのようなバローロだとずっと思っていたんだ。」家族の問題という悲しい出来事がきっかけだったといえ、ゼロから自分の好きなスタイルを追求できることになったのは幸いだとアンドレアは語る。両親の助けを得ながら、自分たち兄弟でワイン造りを行うことにした。ステファノは結婚するためにブラジルに移住したが、弟とともにワインを造るというプロジェクトに惹かれ、収穫や醸造時にはピエモンテに戻り畑やセラーでの作業を行っている。
彼らが所有する畑は標高550 mとラ・モッラ村の中で最も高いグネゾッティ。ここではコンスタントに風が吹き、低地より2-3℃気温が低くなる。また霧が発生するエリアよりも上部に位置している。土壌の組成は50%砂質土壌で30%石灰岩土壌、20%は粘土。ランゲは粘土の量が多いのが一般的だが、標高が高い畑は若い(隆起が遅い)ため砂が多くなる。それにより酸を保ったエレガントで華やかさが特徴のワインに仕上がる。その他にロッケ・デッラヌンチャータの目の前に位置するトリリオーネ(詳細はカストルム・ロケのページを参照)にも畑を所有しており、このブドウからバローロが生まれる予定。畑はすべてオーガニック栽培で、秋の収穫後にオーガニック肥料を土に植えるのみ。非常に厳しい時にのみ銅や硫黄を使用するが、基本的にはほとんど使用しない。「僕たちのスタンスは”土壌に語らせる”こと。この土地、この畑の特徴を十分に反映したブドウを造り、それをワインで表現するんだ。」

2023年11月にマッフレイを訪問した際はまだ醸造設備はなく、知人のセラーを間借りしてワイン造りを行っていた。そのため発酵、熟成、ボトルエイジングなどの工程をそれぞれ違う場所で行うこともあった。ボトルエイジングは自宅の地下スペースで行っていた。「スタートのタイミングだからいろいろな制約がある。でもその中で工夫や発想で予想以上の結果が得られることもある。協力してくれる人への感謝を忘れずに楽しんでいこうと思う。」アンドレアは前向きに語っていた。無事に取引が決まり、翌年の秋ごろに出荷をしようと話していた。そこから数カ月後、アンドレアから急遽連絡が入った。「実は場所を借りられて自分たちのセラーを作れることになったんだ!徐々に引越しをしないといけないから、出荷のタイミングを少し早められないかな?」こちらにとっては願ってもない相談だった。マッフレイを訪問し、彼らのワインをテイスティングしてからずっとその感動が忘れられずにいた。自分たちのセラーを手に入れ、今まで以上に自分たちの表現したいもの造りたいものが追求できると語る。2024年は彼らにとって節目の年となる。2026年に初リリースが予定されているバローロも非常に楽しみだ。
DATA
造り手:アンドレア、ステファノ・マスカレッロ兄弟
国/地域:イタリア/ピエモンテ
栽培面積:3.5 ha
