
ドメーヌ・ヴァルマ
フランス/ボジョレー

ボルドーで出会い、ボジョレー・フルーリーに辿り着くまで
ドメーヌ・ヴァルマの物語は、ボルドーでワインを学ぶふたりの若者の出会いから始まる。ワインマーケティングやビジネスを専攻していたヴァランティーヌとステファンは、学生時代に試飲会や生産地をめぐる中で、「いつか自分たちのワインを造りたい」という想いを共有するようになる。卒業後、それぞれが異なる道を選んだ。ステファンはワインマーケティング会社やボルドーの大手ネゴシアン、さらにはレミー・コアントローにて販売や輸出に携わり、国際市場の構造や消費者の嗜好についての理解を深めた。一方のヴァランティーヌは、ワイン造りの根幹を学ぶべく農業学位を取得し、シャンパーニュの名門シャルトーニュ・タイエなどで研修を重ね、畑と発酵の現場で経験を積んでいった。ステファンの故郷でもあるボジョレーは、ふたりにとって最初から「唯一の選択肢」だったという。ガメイというブドウがこの土地で唯一無二の表現力を持つこと、風景の美しさ、そしてまだ眠る可能性。そのすべてが彼らを惹きつけた。特に彼らが求めたのは、高標高・冷涼・北向きという厳格な条件に合致する理想の畑。長い探索の末に辿り着いたのが、フルーリーのリュー・ディ「レ・ラブロン」である。ここに1950年代に植えられた古木が根を張り、冷たい風が吹き抜ける急斜面は、まさにふたりの夢の結晶だった。ドメーヌ名「Valma」は「Val(谷)」と、ラテン語で“育む”を意味する「Alma」を組み合わせたもので、スペイン語で“魂”を意味する「alma」の響きも重なる。さらに、VALentine MAthieuの頭文字を取っており、土地、哲学、そして二人の情熱が重なり合う象徴的な名前である。


「ヌーヴォーの地」から「クリュの地」へ──フルーリー格付けにかける希望と誇り
ボジョレーは、ナチュラルワインの揺籃として高い評価を受ける一方、ボジョレー・ヌーボーに象徴される早飲み・大量生産型ワインのイメージとのギャップに悩まされてきた。しかし近年、テロワールを表現する高品質ワインの重要性が再認識され、新世代の造り手たちがその価値を再構築している。クリュ・ボジョレーの中でも華やかでエレガントさが特徴のフルーリーでは、ボジョレー初となるプルミエ・クリュ格付けの制定を目指す動きが進行中で、ローヌ農業会議所とボジョレーワイン委員会が10年以上にわたり詳細な土壌調査と分析を実施。2023年には48のリュー・ディのうち7つをプルミエクリュとしてINAOに申請した。ラ・マドンヌとラ・シャペル・デ・ボワ、ヴァルマが所有するこの2区画も申請対象に含まれている。
ヴァルマはフルーリーに特化し、多彩な土壌と標高差、斜面の方角がもたらす個性をそのまま表現することを目指す。醸造はセミ・マセラシオン・カルボニックで行い、野生酵母を使用し、セメントタンクや古樽を併用して熟成させることで、ガメイの持つ透明感ときめ細やかな質感を損なわない。初ヴィンテージ2021年は、レ・ラブロン由来の冷涼な酸と赤系果実の瑞々しい香りが際立ち、現地で高い評価を得た。2022年からはラ・マドンヌやラ・シャペル・デ・ボワの単一区画キュヴェも仕込み、各区画のテロワールをさらに鮮明に描き出す挑戦を続けている。

きめ細やかで澄んだ輪郭──テロワールを映すヴァルマのガメイ
ドメーヌ・ヴァルマのワインは、あくまでも土地が語る物語をそのままボトルに映し出すことを目指している。畑ではオーガニック栽培を実践し、2022年には全区画で転換を開始。バイオインジケーター植物や微細な土壌の変化に耳を澄ませ、「畑が発する声」を捉えることに重きを置いている。発酵は野生酵母、醸造は全房発酵を基本とし、セメントタンクや古樽での熟成を組み合わせることで、過度な抽出や木樽の風味に頼らない、ガメイ本来の透明感と奥行きを引き出している。2021年の初ヴィンテージでは、北向き急斜面「レ・ラブロン」から生まれる冷涼な酸と赤系果実の繊細な香りが印象的で、現地でも高い評価を受けた。翌年からは「ラ・マドンヌ」や「ラ・シャペル・デ・ボワ」の単一リュー・ディごとのキュヴェにも取り組み、テロワールの違いをより立体的に表現する挑戦を始めている。ガメイという品種に対し、軽やかさと複雑さの両立を目指すのがステファンとヴァランティーヌのスタイルだ。「必要なのは、畑とブドウの声に耳を傾けることだけ。私たちが主張しすぎる必要はない」と語る彼らのアプローチは、ジュール・ショヴェの思想を現代に引き継ぎながら、独自のエレガンスを備えた新時代のボジョレーを体現している。
生産者ストーリー
【ボジョレーの未来を描く、フルーリーの新星】
ドメーヌ・ヴァルマは2021年、ヴァランティーヌとステファン・マチュー夫妻によってボジョレーのフルーリーに誕生した新進気鋭のドメーヌである。ふたりはボルドーでワインマーケティングやワインビジネスを学んでいた学生時代に出会い、試飲会や畑を訪れるたびに「自分たちのワインを造りたい」という夢が鮮明になっていった。卒業後、ステファンはワインマーケティング会社やボルドーの大手ネゴシアン、さらにはレミー・コアントローにて販売・輸出の最前線を経験し、国際市場の仕組みや消費者の嗜好を徹底的に学んだ。一方で、ヴァランティーヌは新たにドメーヌを開くために必要な農業学位を取得し、シャルトーニュ・タイエをはじめとするシャンパーニュの著名生産者で研修を重ねた。現場での仕事を通して、ブドウ樹が成長する息づかいや発酵中のワインが放つ生命感に触れ、彼女は「人の手はあくまで補助であり、ワインを形づくるのは自然そのもの」という信念を強めていった。
「ボジョレーを選ぶのは最初から決まっていたことだった。ステファンの生まれ故郷であり、風景の美しさ、そしてガメイがこの土地で唯一無二の個性を発揮するから。他の地域は考えなかった」と夫妻は振り返る。彼らは高標高で冷涼、そして南向きではない畑という厳格な条件を掲げ、理想的な区画を求めて探索を重ねた。その果てに見つけたのが、フルーリーのリュー・ディ“レ・ラブロン”である。ここはボジョレーでも有数の標高を誇り、1950年代に植樹された古木が根を張る北向きの急斜面。冷涼な風が吹き抜けるこの土地は、彼らの理想と完全に合致していた。
ボジョレー移住後、ふたりはコート・ド・ブルイィの名門シャトー・ティヴァンや、ナチュラルワインの父と称されるジュール・ショヴェの思想を引き継ぐジャック・ノーポールのサポートを受けることとなった。ジュール・ショヴェ(1907–1989)は、野生酵母発酵の重要性、過剰な亜硫酸使用の抑制、有機農法の推奨など、自然なアプローチを科学的に裏付け、現代ナチュラルワインの基礎を築いた人物である。彼の思想は、マルセル・ラピエール、ジャン・フォワイヤールといったボジョレーの伝説的生産者、さらにジュラのピエール・オヴェルノワにまで影響を与え、今日の自然派ムーブメントの礎を作り上げた。ヴァルマ夫妻はその哲学に深く共鳴し、自らのワイン造りの中心に据えている。

2021年、ドメーヌ・ヴァルマは初ヴィンテージをリリースした。ドメーヌ名「Valma」は「Val(谷)」と、ラテン語で“育む”を意味する「Alma」を組み合わせたもので、スペイン語で“魂”を意味する「alma」の響きも重なる。さらに、VALentine MAthieuの頭文字を取っており、土地、哲学、そして二人の情熱が重なり合う象徴的な名前である。
現在はレ・ラブロンに加え、フルーリーの銘区ラ・マドンヌ、ラ・シャペル・デ・ボワの畑を取得し、計5.5haを所有。設立前から土壌分析を綿密に行い、2022年には全区画でオーガニック栽培への転換を開始した。2025年末までに認証取得を目指しており、「畑が発する声を聞く」ことを最重要視している。バイオインジケーター植物や土壌の変化を観察し、ブドウが健全に育つための環境を整える。ヴァランティーヌは「私たちの役目は、畑とブドウが持つ潜在力を邪魔せず、むしろ引き出すことだ」と語る。
ボジョレーは、ナチュラルワインの揺籃として高い評価を受ける一方、ボジョレー・ヌーボーに象徴される早飲み・大量生産型ワインのイメージとのギャップに悩まされてきた。しかし近年、テロワールを表現する高品質ワインの重要性が再認識され、新世代の造り手たちがその価値を再構築している。フルーリーでは、ボジョレー初となるプルミエ・クリュ格付けの制定を目指す動きが進行中で、ローヌ農業会議所とボジョレーワイン委員会が10年以上にわたり詳細な土壌調査と分析を実施。2023年には48のリュー・ディのうち7つをINAOに申請した。ラ・マドンヌとラ・シャペル・デ・ボワ、ヴァルマが所有するこの2区画も申請対象に含まれている。
ヴァルマはフルーリーに特化し、多彩な土壌と標高差、斜面の方角がもたらす個性をそのまま表現することを目指す。醸造は全房発酵と自然酵母を基本とし、セメントタンクや古樽を併用して熟成させることで、ガメイの持つ透明感ときめ細やかな質感を損なわない。初ヴィンテージ2021年は、レ・ラブロン由来の冷涼な酸と赤系果実の瑞々しい香りが際立ち、現地で高い評価を得た。2022年からはラ・マドンヌやラ・シャペル・デ・ボワの単一区画キュヴェも仕込み、各区画のテロワールをさらに鮮明に描き出す挑戦を続けている。


国際市場でも注目度は急速に高まっており、アメリカではBecky Wasserman & Co.が輸出を開始したことをきっかけに、多くのワインショップやレストランで評価を得ている。「ガメイの魅力は軽やかさと複雑さの調和にある。畑と気候が語る物語を、ボトルにそのまま閉じ込めたい。」ステファンはマーケティングと販売戦略を、ヴァランティーヌは畑と醸造を担う。互いの専門性を尊重し合いながら、夫妻は着実にドメーヌの基盤を築き上げてきた。「ボジョレーにはまだ眠る可能性がある。私たちはフルーリーという小さな村から、その価値を世界に発信したい。」二人の目には、テロワールの真の魅力を解き放ち、次世代のボジョレー像を描く明確なビジョンがある。彼らの情熱と行動力、そしてジュール・ショヴェが残した哲学を継承する姿勢は、すでに新時代のボジョレーを象徴する存在となりつつある。夫妻の挑戦は、まだ始まったばかり。
DATA
造り手:ヴァランティーヌ、ステファン・マチュー
国/地域:フランス/ボジョレー
栽培面積:5.5 ha
