San Barnaba

サン・バルナバ

イタリア / ピエモンテ

畑を知る兄弟と、自由を求めた醸造家が始めるワイン造り 

サン・バルナバは、2023年に始動したピエモンテ州セッラルンガ・ダルバを拠点とする新世代のワインプロジェクトである。

中核を成すのは、ロベルトとジョヴァンニのパスクエロ兄弟、そして醸造を担うフランチェスコ・ロッカの3人。兄弟は長年、畑とワイナリーの売買仲介に携わり、「どの畑が誰の手に渡るかで土地の未来は決まる」という現実を内側から見続けてきた。そこで彼らは、先に理想のワイン像を描き、好条件の畑が売りに出た際に少しずつ自分たちで畑を購入してきた。

そこに加わったのが、彼らの古くからの友人のフランチェスコ・ロッカである。バルバレスコの名門ブルーノ・ロッカに育ちながらも、「規模や数字から距離を置き、友人たちとより自由な表現を求めていた」とフランチェスコは語る。サン・バルナバはSNSもウェブサイトも持たない。「良いワインは宣伝ではなく、人を介して広がる」。友人として、友人や大切な人のためにワインを造る。その思想を、彼らは最初から実践している。

強さではなく、差異を選ぶ。土地の声が最も正直に現れる場所から

サン・バルナバの畑選びは、このプロジェクトの姿勢をそのまま映し出している。彼らが価値を見出すのは、力強さや即時的な分かりやすさではない。「繊細で、違いがはっきり出る畑ほど、造り手の姿勢が問われる」その考えのもと、土地と向き合っている。

2024年、彼らはラ・モッラのセッラ、そしてヴェルドゥーノのモンヴィリエーロという二つの重要なクリュを購入した。いずれも、構造の強さを誇示するタイプではなく、緊張感と透明感を備え、土地のニュアンスが前面に現れる区画である。ここから将来的にバローロが生み出される予定だが、彼らが目指すのは、「力を見せつけるバローロではなく、土地が自然に語り出すようなバローロ」である。

一方で、サン・バルナバの関心はバローロに限定されない。フレイザ、ティモラッソ、そしてヴェルドゥーノに植えられたペラヴェルガといったピエモンテの土着品種にも、同じ熱量が注がれている。「忘れられてきた品種ではなく、土地に本当に合っているからこそ、今も残っている。」彼らにとって、品種選択もまたテロワールの一部なのである。畑ではオーガニック栽培を基本とし、過度な介入を避ける。自社畑に加え、一部には契約栽培も含まれるが、成熟の判断や収穫のタイミングは一貫して自分たちの基準で行う。「畑の声を聞くためには、急がないことが一番大事だ。将来的には、すべてのワインを自社畑由来とすることを見据えている」とビジョンを語る。

介入を減らすほど、畑は雄弁になる 

サン・バルナバの醸造における基本姿勢は、伝統的でありながら意図的に控えめである。すべてのワインに共通するのは、培養酵母を用いず、温度管理も行わず、無濾過・無清澄で仕上げ、SO2の使用を最小限に抑えるという一貫した方針。「私たちにとって醸造とは、”ワインを作る”行為ではなく、畑と品種が本来備えている表現を邪魔せずに導くための工程にほかならない。介入を減らすほど、畑は雄弁に語りかけてくれる」と哲学を説明する。発酵はフレンチオークの開放桶で行われ、果皮浸漬は20-30日間を基本とし、ネッビオーロや将来のバローロではさらに長いマセラシオンが取られる。セラーにはコンクリート容器と樽のみが置かれ、ステンレスタンクは一切使用されていない。熟成は、ネッビオーロはスラヴォニアンオークの大樽、ペラヴェルガ、フレイザ、ティモラッソは主にコンクリートで最大約6カ月行われる。操作性ではなく、安定性と中立性が常に選択基準だ。ネッビオーロではタンニンの量ではなく質が重視され、ランゲ・ネッビオーロであっても、赤系果実や花の香りの奥に、若いうちから明確な骨格と緊張感が感じられる。フレイザは野性味を抑え込まず、果実と酸の均衡を探ることで硬質さと透明感を両立させる。ペラヴェルガは軽やかでありながら極めて土地的な表情を持ち、「軽いワインではなく、静かなワインであってほしい」という言葉がその性格を端的に示す。デルトーナ・ティモラッソは他のワインより1年長い熟成が施され、「待てば必ず応えてくれる」という理解のもと、張りのあるミネラル感を備えた洗練された佇まいへと導かれる。2024年から仕込まれるセッラとモンヴィリエーロのバローロも、その延長線上にある。サン・バルナバは多くを語らない。ただ土地を信じ、静かに誠実なワインを造り続けている。

生産者ストーリー

数字や規模から離れ、友人と友人のための自由なワイン造り

トスカーナのとあるワインショップに立ち寄った際、棚の一角に見慣れないピエモンテのボトルが置かれているのが目に留まった。それまで幾度となくピエモンテを訪れ、生産者やワインショップを巡ってきたが、そのラベルを目にするのは初めてだった。気になって店のスタッフに尋ねると、こんな答えが返ってきた。「それは2023年ヴィンテージが初リリースの新しい生産者なんだ。SNSもウェブサイトも持たず、オンライン販売も許可していない、少し変わった存在でね。でも大人気で、ピエモンテではほとんど手に入らないと聞いている。本当に素晴らしいワインだよ。」半信半疑のまま1本購入し、飲んだ瞬間、その言葉が誇張ではないことを理解した。派手さはない。しかし、雑味のない透明感と、土地の輪郭がくっきりと立ち上がる感覚があった。なぜこのワインが、宣伝を一切せず、口コミだけで広まっているのか。その理由は、グラスの中にすべて詰まっていた。すぐに生産者とコンタクトを取りたいと思ったが、驚くほど情報が出てこない。やむを得ず、カストルム・ロケのイザッコに相談し、彼の手を借りてようやく辿り着いたのがサン・バルナバだった。

サン・バルナバは、2023年から始まったピエモンテ州セッラルンガ・ダルバに拠点を置く新世代のワインプロジェクト。その中核を成すのは、ロベルトとジョヴァンニのパスクエロ兄弟、そして醸造を担うフランチェスコ・ロッカの3人。パスクエロ兄弟は、長年にわたりピエモンテにおいて、大手ワイナリー向けのワイナリーおよび畑の売買に関する仲介事業を行ってきた。しかし、彼らは単なる不動産取引の担い手ではない。「どの畑が、どの生産者の手に渡るのか。それによって、その土地の未来は大きく変わる」と、畑の価値が市場の論理だけで決まっていく現場を、彼らは内側から見続けてきた。そうした経験の積み重ねの中で、兄弟は次第に自分たち自身の手でワインを造る構想を明確にしていく。数年前から、好立地の畑が売りに出される機会があれば、自らの判断で少しずつ購入を重ねてきた。それは規模拡大を目的とした動きではない。「先に造りたいワインがあって、それにふさわしい畑だけを選んできた。私たちには、一般に市場に出回らないような素晴らしい畑が選択肢にある」という言葉の通り、時間を味方につけた選択であった。そこに加わったのが、彼らの古くからの友人である醸造家フランチェスコ・ロッカ。彼はバルバレスコの名門、ブルーノ・ロッカの一員として育ち、家族のワイナリーに関わってきた。一方で、家業とは異なる文脈でワインと向き合う場を求めていた。「数字や規模を追いかけるのではなく、もっと自由に、友人と自分たちが信じる表現を試せるプロジェクトが欲しかった。」サン・バルナバは、そうしたフランチェスコ個人の欲求と、パスクエロ兄弟の構想が重なった地点に生まれている。彼らはSNSを行わず、ウェブサイトも作らない。「良いワインは、宣伝ではなく、人を介して広がるものだと思っている。友人や、大切な人との時間の中でこそ、本当に伝わる。3人の友人として、友人や大切な人のためにワインを造っていきたい。」彼らは、その思想を最初から実践しているワイナリーである。

サン・バルナバの畑選びは、このプロジェクトの姿勢をそのまま映し出している。彼らが価値を見出すのは、力強さや即時的な分かりやすさではない。「繊細で、違いがはっきり出る畑ほど、造り手の姿勢が問われる」という考えのもと、土地と向き合っている。2024年、彼らはラ・モッラのセッラ、そしてヴェルドゥーノのモンヴィリエーロという二つの重要なクリュを購入した。これらの区画からバローロが生み出される予定。いずれもバローロの中でも特に緊張感と透明感を備えた区画であり、構造の強さよりも、土地のニュアンスが前面に現れる性格を持つ。彼らはこれらの畑から、力を誇示するバローロではなく、「土地が自然に語り出すようなバローロ」を目指している。一方で、サン・バルナバの関心はバローロに限定されない。フレイザ、ティモラッソ、そしてヴェルドゥーノに植えられたペラヴェルガといった、ピエモンテの土着品種にも強い情熱を注いでいる。「忘れられてきた品種ではなく、土地に本当に合っているからこそ、今も残っている」彼らにとって、品種選択もまたテロワールの一部である。畑ではオーガニック栽培を基本とし、過度な介入を避ける。自社畑に加え、一部には契約栽培も含まれるが、成熟の判断や収穫のタイミングは一貫して自分たちの基準で行う。「畑の声を聞くためには、急がないことが一番大事だ」将来的には、すべてのワインを自社畑由来とすることを見据えている。

サン・バルナバの醸造における基本姿勢は、伝統的でありながら、意図的に控えめである。すべてのワインに共通するのは、培養酵母を用いず、温度管理も行わず、無濾過・無清澄で仕上げ、SO2の使用を最小限に抑えるという一貫した方針。彼らにとって醸造とは、ワインを「作る」行為ではなく、畑と品種が本来備えている表現を邪魔せずに導くための工程にほかならない。発酵はフレンチオークの開放桶で行われ、果皮浸漬は20-30日間を基本とする。ネッビオーロおよび将来のバローロについては、さらに長いマセラシオン期間が取られる。セラーにはコンクリート容器と樽のみが置かれ、ステンレスタンクは一切使用されていない。熟成においては、ネッビオーロはスラヴォニアンオークの大樽で、それ以外のペラヴェルガ、フレイザ、ティモラッソは主にコンクリートで最大約6カ月熟成される。素材と容器の選択においても、操作性よりも安定性と中立性が優先されている。

ネッビオーロでのアプローチは、タンニンの量ではなく質が重視される。現在リリースされているランゲ・ネッビオーロは、バルバレスコのカールス(Cars)MGAに位置する畑のブドウを使用しており、若木ながらも立地由来の緊張感と明確な輪郭を備える。ランゲ・ネッビオーロであっても、バローロと共通する思想のもとで造られ、赤系果実や花の香りの奥に、若いうちから明確な骨格と緊張感が感じられる。フレイザに用いられるブドウは、モスカートの産地として知られるサント・ステファノ・ベルボの高標高に位置するカーモおよびヴァルディヴィッラの畑に由来する。冷涼な環境と大きな昼夜の寒暖差により、糖度の上昇を抑えながら果皮の成熟を待つことができ、フレイザ特有の野性味と張りのある酸を保つことが可能となる。サン・バルナバはこの品種の個性を抑え込むことなく、果実と酸の均衡を丁寧に探ることで、硬質さと透明感を両立させている。軽快さの中に密度があり、空気に触れることで表情を広げていくタイプである。ペラヴェルガは、軽やかでありながら極めて土地的な表情を持つ。「軽いワインではなく、静かなワインであってほしい」という彼らの言葉が、その性格をよく表している。現在はヴェルドゥーノ由来の買いブドウから造られているが、将来的には新たに植えられた自社畑が供給源となる予定である。デルトーナ・ティモラッソは、他のワインよりも1年長い熟成期間が設けられている。「ティモラッソは、待てば必ず応えてくれる」という理解のもと、一般にふくよかになりがちなこの品種を、アルコール度数を抑えつつ、張りのあるミネラル感を伴った洗練された佇まいへと導いている。2024年ヴィンテージからは、セッラとモンヴィリエーロという二つのクリュから、初のバローロが仕込まれている。リリースはまだ先である。しかし、これまでの畑選びと醸造における姿勢を見れば、その方向性はすでに明確だ。サン・バルナバは多くを語らない。ただ土地を信じ、静かに、誠実にワインを造り続けている。

DATA

造り手:フランチェスコ・ロッカ、ロベルト・パスクエロ、ジョヴァンニ・パスクエロ

国/地域:イタリア/ピエモンテ

栽培面積:TBC