
マックス・ガイトリンガー
ドイツ/バーデン


MWが選ぶ次世代を担うワインメーカー
2022年7月、ワイン界でもっとも名声の高い”マスターオブワイン(以下、MW)”の称号をもつヤネック・シューマン MWがヴォルフガング・シュタウトとともに1冊の本を出版した。” New Wine Wave” この本ではヨーロッパの次世代を担うワインメーカーが紹介されている。ドイツからはヴァーゼンハウスのアレクサンダー・ゲッツェ、クリストフ・ヴォルバーやバーデンの老舗ワイナリーベルンハルト・フーバーの若き当主ユリアン・フーバーなどを含む29生産者が紹介されている。その中で” Schlichte Eleganz(シンプルなエレガンス)” として紹介されているのがマックス・ガイトリンガーだ。


ドイツ、スイス、フランスの三か国国境の老舗レストランの9代目
ドイツ最南端のバーデン地方、人口100人の村、エガーテン。スイス、フランス、ドイツの三か国国境付近に位置するこの小さな村でひと際活気を見せるレストランがある。ここでは自家菜園や地元の食材を使用し、この地方の昔ながらの伝統料理をシンプルながら上品に表現している。100年以上レシピは変わっていないという。この” Gasthaus zum Hirschen” を取りまとめるのが9代目のマックス・ガイトリンガー。伝統料理に合わせるべくこのレストランで提供されるワインは” Max Geitlinger”。そう彼が自ら造っている。

最高の品質を求めたビオディナミ農法
マックスは、レストラン運営とワイン造りのパートナーとして迎えたユリアとともにピノ・ノワール、グートエーデル、ミュラー・テゥルガウといったこの地で伝統的に植えられてきたブドウに加え、メルロやソーヴィニヨン・ブランなどの国際品種、そして近年注目を集めるPIWI品種であるレゲントを栽培している。栽培面積は2 haのみ。「自分にとって理想的なワインを造るために、ブドウ畑では繊細かつ細心の注意を払い、すべての工程を自分たちの手で行う。そうして初めて最高の品質のブドウを得ることができるし、それこそが最高のワインに必要なことだと思っている。」と、彼は自身のアプローチを説明する。 畑では認証を取っていないが全てビオディナミ農法を実践している。栽培はコルドン方式。ブドウ畑の通気性を高め、収量を低く抑えるためにブドウの約半分を切り落とす。収穫日は酸とpH値によって決定し、収穫は全て手摘みで行う。

生産者ストーリー
【お客さんに喜んでもらうため周囲の反対を押し切って始めたワイン造り】
スイス、フランス、ドイツの三か国国境付近に位置するバーデン地方の小さな村エガーテンでひと際活気を見せるレストランがある” Gasthaus zum Hirschen”。宿泊もできるゲストハウスを兼ねたこのレストランでは、自家菜園や地元の食材を使用し、この地方の昔ながらの伝統料理をシンプルながら上品に表現している。100年以上レシピは変わっていないという。地元やスイス、フランスからの常連が多く、夏場の週末は特に満席で予約必須で活気に満ちているが、あわただしい様子はない。それぞれのテーブルの常連さんから声を掛けられコミュニケーションを取りながら、笑顔にしている。その人物がマックス・ガイトリンガー。そして細かい気配りで円滑に回しているのがユリア。素晴らしい食事と温かなおもてなし。そしてこの店を訪れる人々が求めているものがもう一つ。それがワイン。Gasthaus zum Hirschenで提供されているワインはひとつのワイナリーのみ。それがマックスとユリアが自ら手掛けるワイン” Max Geitlinger” である。スパークリング、白、ロゼ、赤、スピリッツ。ヴィンテージにより異なるが約15種類ほどを提供している。それらのワインは共通して、ここでの食事同様にシンプルさと上品さが見事に融合し、食事にやさしく寄り添っている。食事とワインどちらか片方が主役なのではなく、どちらもがお互いを引き立てあっている。
2012年、マックスは亡き祖父の後を継いでここGasthaus zum Hirschenの9代目となった。それまでガイトリンガー家はレストランを経営する傍ら、農業を第2の柱として営んできた。マックスも牛、豚、鶏、そして農業とともに育った。しかし、マックスは大きな決断をする。「ワイン造りを始めたい。」当初マックスの話を聞いた家族は反対した。「レストランの経営だけじゃなくてワイン造りまでやるのは無理がある。フルタイムの仕事を2つ掛け持ちするなんて馬鹿げている。」それでもマックスの意思は一切揺るがなかった。「このレストランでは自分たちの農場や地元の食材を使った料理を提供している。だからこそレストランで提供するワインにもこだわりたい。そして自分たちが造った食材に一番合うのは同じ土地でとれたブドウから自分で造ったワインだと思う。一番はお客さんに喜んでもらいたい。」マックスの強い意志に周囲も次第にその決断を尊重するようになる。新たな挑戦が始まった。
「家族や仲間が一生懸命応援してくれてサポートしてくれるから、自分は納得するまでワイン造りができる。とても感謝しているよ。家族の当初の心配通り自分の体には大きな負担になっているけどね。」マックスは満足そうに笑う。 ワイン造りを始めたいというマックスの強い意志に動かされたのは家族だけではなかった。同じくバーデンでワイナリーを営むアルベルト・ソデールのもとで醸造を、その後ヴァインスベルクでブドウ栽培技術を学ばせてもらった。今日マックスは2 haの畑でピノ・ノワール、グートエーデル(シャスラ)、ミューラー・テゥルガウといったこの地で伝統的に植えられてきたブドウに加え、メルロやソーヴィニヨン・ブランなどの国際品種、そして近年注目を集めるPIWI品種であるレゲントを栽培している。「伝統を大事にし、さらに自分だからできることを追求したい。野菜も同様だが、気候が変わってきている現在、新たな品種を試すことは重要だと思う。でも僕の理想とするスタイルは一貫している。奇をてらわずに必要なものだけに集中する。シンプルかつ上品に。」
そんなマックスはワインを全てフランスではヴァン・ド・ペイに該当するラントヴァインとしてリリースしている。その理由は師匠と仰ぐツィアアイゼン当主ハンスペーターの影響がある。ルールに縛られず自らのスタイルを貫く姿勢に共感した。またマックスは除梗機など自身が持っていない設備が必要な際にはハンスペーターに助けてもらう。そしてマックスもまたツィアアイゼンを中心としフォルグリムラー、ヴァーゼンハウス、リンダー、ローターファーデンなど著名なワイナリーも参加し近年注目を集めるラントヴァインというカテゴリーがさらなる可能性を秘めていることを認識している。「ハンスペーターは親切で非常にエネルギッシュ。多くの人を巻き込むパワーがある。彼の考え方が好きだし、ラントヴァイン運動のコミュニティの一員であることが幸せだし、誇りに思うよ。もちろん彼のアスパラガスも大好きさ。」
マックスは生まれ育ったエガーテン村をこよなく愛する。「僕の畑は山の上にあって標高が高い。フランスもスイスも目の前だし、ここから見える景色が大好きなんだ。都会は苦手だし自然が大好き。この土地が落ち着くし海外にもあまり行きたいとは思わない。だけど一つだけどうしても行ってみたい国がある。それが日本なんだ。」本人より先にマックスの思いを乗せたワインが日本に届く。
DATA
造り手:マックス・ガイトリンガー、ユリア
国/地域:ドイツ/バーデン
栽培面積:2 ha
