
ラ・ヴェデッタ
イタリア/ピエモンテ

夫婦二人三脚で歩む若手生産者
ラ・ヴェデッタを営むのはイタリア・ピエモンテのバルバレスコ村出身のマルコとドイツの小さな町フォーゲルスベルク出身のスワンヒェの夫婦。ブドウ畑はバルバレスコ村に2 ha、隣接するカスタニョーレ・デッレ・ランツェの丘、サランジーノに1.5 haを所有しネッビオーロやバルベーラ、フレイザを栽培している。中でも注目すべきはネッビオーロが栽培されている彼らの家族が単独所有するバルバレスコ村のモノポールCa Grossa(カ・グロッサ)である。


日の目を見る隠れた銘醸畑 モノポール Ca Grossa
円形状のマルティネンガ、曲がりくねったアジリ、ラバヤの急斜面。それらの壮大な丘陵地帯を一望できるのは川の対岸に位置するカ・グロッサ。この畑はマルコの祖父が単独所有していたため教科書やウェブサイトで語られることは少ない(貸していた時期もあった)。MGAとしては17 haの面積だが、実際にブドウ畑となっているのは2 haのみで、他のエリアは森やヘーゼルナッツの木立で占められており、その分非常に生物多様性に富んだ土地となっている。「この畑は南東向きで、祖父の時代では日当たりが十分でなくあまり注目されてなかった。だからブドウよりもヘーゼルナッツが植えられてきた。でも今では温暖化の影響で南向きの畑は日焼けや過熟のリスクが高くなってきている。その分、カ・グロッサは日照的にベストといえるかもしれない。」 とマルコは語る。
カ・グロッサはこの地域では典型的な泥灰土と石灰岩の土壌に約15 %という高い割合の砂岩が混ざり合っている。それによりアロマティックでフィネスを備えたワインが生まれる。「2018年ヴィンテージからカ・グロッサの名を冠したワインを造り始めた。僕らはまだこの土地を理解することに努めている段階。」そのためカ・グロッサの畑の中でも特に優れているエリア0.5 haのみを”Barbresco Ca Grossa”としてリリースし、他は”Barbresco”としている。


オーガニック栽培と生物多様性
カ・グロッサのブドウ畑は森やヘーゼルナッツの木立に囲まれているため生物多様性が守られている。畑を歩くと多くの昆虫や植物の活き活きとした生命の輝きを感じる。マルコとスワンヒェはその生物多様性を守るため徹底したオーガニック農法でブドウを栽培している。ブドウだけでなくワイナリーの庭にある野菜畑でも農薬は一切使用しない。「祖父の代から引き継いできたこの美しい土地を私たちも守っていきたい。そのためには生物多様性が守られることが大切だと思う。イノシシとか野生動物とも共存していく。飼っている鶏をキツネに食べられてしまったときはショックだったけどそれも生態系の一部だから仕方ない。キツネのお腹が満たされてよかった。」サラジーノのおいても同様のアプローチをしている。

生産者ストーリー
【歴史ある産地から新しい声を届ける二人のワイン】
「生まれ育った土地を離れて初めて良さに気が付く」その土地に慣れ親しんでいることもあるだろうが、故郷の景観と文化が世界遺産に登録されているのであれば尚更か。
ラ・ヴェデッタを営むのはマルコとスワンヒェ夫婦。イタリア・ピエモンテ州バルバレスコ村出身のマルコにとっては夏の生命力に溢れたブドウ畑も、黄金に輝く紅葉も、朝方に立つ霧も幼少期から見慣れた当然の景色だった。祖父はブドウとヘーゼルナッツ農家であったため、マルコにとってワインは生活の一部だった。それゆえ将来の「仕事」について考える際に無意識的にワイン以外を検討していた。「生まれ育った土地だからね。当たり前のこと過ぎて昔は特別にすごいとか思ったこともなかったよ。」そうして人間学と経済学を学び、インターナショナルな企業でのオフィス職に進路を決める。
ドイツのフランクフルトでの多忙な日々にマルコは疲れていた。そんな折、久しぶりに休暇で地元に戻った。「慣れ親しんだ景色が不思議と輝いて見えた。心が一瞬で満たされるようだった。けれどこの美しい景色は変わらず昔からずっとここにあった。ただ変わったことがあるとすれば僕の疲労感と故郷が世界遺産に登録されたことくらいかな。」決心したマルコは一旦ドイツに戻り、そこで運命の相手スワンヒェと出会う。
ドイツの小さな町フォーゲルスベルク出身のスワンヒェは彼女の名前が「小さな白鳥」という意味だからだろうか、幼いころから世界中を旅することに憧れていた。経済学を学び、国際経営学の修士号を取得した後、アジアでの海外勤務を経験し、より世界の多様性に魅了された。しかしそんな彼女がより魅了されたのは目を輝かせ夢を語るマルコだった。「私も彼の夢を一緒に叶えたい。」そうして二人はマルコの親戚の住むバルバレスコへ居を移した。「ラ・ヴェデッタを作り上げるのは、まるで新しい家族を作るようなものだった。新しい住まい、共通のプロジェクト、決断、希望、心配、喜びを毎日共有する。現在、私はとても幸運だと感じている。料理とワインへの情熱を、大好きなアウトドアライフと融合させ、その美しさに驚かされる日々を過ごせている。」彼女は充実感に満ちた顔で笑う。
祖父が所有していた畑はマルコの叔父が引き継いでいた。叔父は祖父が1950年代に植えたヘーゼルナッツの栽培に注力し、ブドウ畑は他の農家に貸していた。ただ、祖父が大切にしてきた畑を守るためそのブドウ畑ではオーガニック農法を行うことを条件としていた。叔父はマルコの夢を聞いてとても喜んだ。畑の借主を何度も説得し、少しずつ畑を返還する了承を得た。「僕は幸運だったよ。叔父がブドウ畑を所有していることはもちろんだけど、これまで借りてくれていた人がしっかりと畑を管理してくれていたし、僕の夢を応援すると言って畑を返却してくれたんだ。」そう語るマルコの表情は喜びとともに強い責任感を映し出していた。
世界遺産に登録されている重みと歴史を背負っている一方、それに縛られることはない。「私たちは常に自由に実験し、探求してワインを造っている。カ・グロッサが与えてくれる唯一無二の個性とその価値を理解している。でも、私たちはまた、ランゲに新しい声、すなわち私たちの声を届けたいと考えてきた。私たちだから表現できるものがあると思うんだ。”世界遺産”、”バルバレスコ”という偉大な名前に重みはあるけれどそれは重荷とは感じてないよ。私たちは何よりワイン造りを楽しんでいるんだ。」 二人は謙虚に前向きに新たな旅路を歩いている。
DATA
造り手:マルコ、スワンヒェ
国/地域:イタリア/ピエモンテ
栽培面積:3.5 ha
