Château Perray-Jouannet

シャトー・ペレ・ジュアネ

フランス/ロワール

高品質のシュナン・ブランを生み出すクォーツ土壌 

ペレ・ジュアネのシュナン・ブランを特徴づけるのは、この地域では限られたエリアでしか見ることのできないクオーツ(石英)土壌。隣接するボンヌゾーでは黒いシスト土壌が特徴的で、土壌が熱を蓄えるためにブドウの糖度が上がることで上質な甘口ワインが生産されている。一方で、白色のクオーツ土壌は太陽光を反射し熱を蓄えないため、ブドウは酸を保ちながらゆっくりと成熟する。それによりペレ・ジュアネのクオーツ土壌からはブドウの熟度と果実由来の酸のバランスに優れた高品質のシュナン・ブランが生み出される。

品質を優先するため規模の縮小へ 

ロワール地方アンジュー地区に位置するシャヴァーニュという村でワイン生産者の5代目として生まれたレミ。ボルドーの著名ネゴシアンで働いたのち、アンジューに戻り、2020年ヴィンテージからシャトー・ペレ・ジュネを引き継ぐ。そのタイミングでレミが真っ先に行ったのは、オーガニック栽培への転換と徹底的な土壌の調査。また、「畑仕事では一切の妥協をしたくないから、自分で管理できる以上の畑は持たない」というポリシーのもと、畑の一部を売却した。現在は20 haの畑を所有するが、畑同様に自分で管理できる以上のワインは造りたくないとして、最良のブドウ5 ha分のみを自分で使用し、残りは他生産者へ販売をしている。「ワインは畑で造られると考えている。だから一日の大半を畑で過ごす。白ブドウではアロマと酸のバランス、黒ブドウでは種と果皮の成熟という観点で完璧なタイミングで収穫を行う」とレミは語る。同じ区画でも成熟度にばらつきがあるため、4-5回に分けて収穫を行う。自分たちのワインの生産量を抑えていることで、ここまでの”適切な収穫日”を徹底できているという。

庭のような多様性のある畑を目指して 

ペレ・ジュアネの畑を見ると特徴的なクオーツ土壌の他にあることに気が付く。それは非常に多種多様な植物が植えられていることだ。石英の区画には最高樹齢約80年のシュナン・ブランから、若いもので2024年に植えた若木まで幅広い樹齢のブドウが植わっている。他にもリンゴやオリーブの木が植えられている。「植物に多様性があって、庭みたいに楽しめたらいいと思っている。」ブドウはネイティヴセレクションでクローンに多様性を持たせている。多様性は土壌においても見られる。「この地域の土壌組成は非常に複雑で、たった数十メートル離れただけで全く異なる土壌が見られる。そして、それぞれの土壌に適する品種を栽培しているんだ」とレミは説明する。この地では主に3タイプの土壌が見られる。ペレの象徴ともいえるクオーツ(石英)、アンジュ地方の典型的なシストと沖積層、そして粘土石灰質土壌である。柔らかく軽いシスト土壌では、特に地元品種のグロロー・ノワールに重点が置かれ、この品種独特のスパイシーな風味を持つ優れた赤ワインを生み出せることを証明している。また、貧しい土壌の上で育つガメイも”レ・ジャルダン”にそのフルーティーさとフレッシュな風味をもたらす。ペライからわずか10 キロメートル離れると、まったく異なる風景が広がる。ここは、アルモリカン山塊を離れ、パリ盆地の台地に登り、約1000万年前の上部中新世の化石層や、9000万年前のチューロン期のチュフ岩から成る粘土石灰質土壌が見られる。ここには父方の祖母の故郷でもあるこのブドウ畑があり、カベルネ・フランに最適なテロワールと言われる。粘土と石灰岩は、この品種に必要な安定した水分供給を保証し、細やかでエレガントな粘土質の風味を引き出す

  

生産者ストーリー

【徹底的な品質へのこだわりのため規模の縮小へ】

フランス、ロワール地方アンジュー地区に位置するシャヴァーニュという村でワイン生産者の5代目として生まれたレミ。幼いころからワイン造りが身近にあった彼は、大学でブドウ栽培やワイン造りを学び、卒業後は、より広範囲にワインのことを学ぶため、ボルドーの著名なネゴシアン、ユリス・カザボンヌで働く。「ボルドーの巨大シャトーは、自分が生まれ育った地域やワイナリーとは全く違う世界だった。彼らと直接コミュニケーションを取り、テイスティングをし、栽培や醸造、ワイン市場やマーケティングについて話したのは自分にとってとても貴重な体験だった」とレミは語る。2018年、家族にワイナリーに戻りワイン造りに参加する。しかし、家族間での意見の相違があり、レミは奥さんとともに家族のワイナリーを出ることを決意。縁あって家族のワイナリーから200メートルほど離れたワイナリー、シャトー・ペレ・ジュアネを購入し引き継ぐこととなる。そして2020年ヴィンテージからシャトー・ペレ・ジュアネとしてワインをリリースしている。

シャトー・ペレ・ジュアネはレイヨン渓谷を見下ろす台地に位置する。南向きに広がるペレと呼ばれるこの土地は、中世フランス語で”岩の多い場所”を意味する”ペロワイ”に由来している。16世紀には、すでにこの地でブドウが栽培され、名高いクオーツ(石英)の採石場としても利用されていたことが記録されている。19世紀にはグロロー家によってこの土地が大きな発展を遂げ、特に1828年に生まれたフランソワ・グロローが1870年にエヴルーの司教に任命され、ペレのブドウ畑を拡張した。彼は1880年に城とワイナリーを建設し、現在のドメーヌの基盤を築いた。その後、この地域は鉄道の発展とともにさらに栄え、ペレの駅がアンジェとポワティエを結ぶレイヨン丘陵線に設けられ、地元産品やワインの輸送が盛んになる。司教の死後もワイナリーはその家族によって所有されていたが、1911年に売却され、その後複数の所有者を経てきた。

2020年、レミは畑を引き継ぐとすぐに質を重視したブドウ栽培を目指し、オーガニック栽培に転換。高品質なブドウを付ける古樹のカッティングを使用してマッサル・セレクションを行い、ブドウ樹の植え替えを行った。また広すぎて目が届かないという理由から畑を一部売却しブドウ畑の縮小へと踏み切った。

「私たちの他に、2人の従業員がいて、父親も時々手伝ってくれている。私たちの信念は”ワインは畑で造られる”ということ。だから私たちは一日のほとんどを畑で過ごす。そして仕事では一切妥協したくないから、自分たちで面倒を見切れないほどの畑は所有したくない。ブドウ栽培は全てオーガニックだから、手間がかかるんだ。現在の量でも広すぎると感じている。だから今後はさらに畑を手放そうと思っている」そう語る。また、ワイン造りにおいても自分たちで管理できる分しか造りたくないとして、自分たちのワインに使用するのは最も優れたブドウ5 ha分のみで残りは他の生産者へと販売している。新しくワイナリーを設立した生産者と話をしていると、ある程度の規模までのワイナリーの拡大を目指している人が多い。それは彼らの夢や野望を叶えるために当然だと思うし、ワイン産業が成り立つうえで重要なことだと思う。そんな中で、レミとティフェンの考え方は新規生産者の中では珍しいと感じた。しかし同時に、真面目で謙虚な彼ららしいとも感じた。

ワイナリーの目の前には幅800メートル、長さ18メートルという非常に限られた石英(クォーツ)が見られる限られたエリアがある。ブラックシストの影響で熱が蓄えられ、ブドウの熟度が高くなることで上質な甘口ワインの産地として知られる隣接するボンヌゾーとは異なり、ここでは石英が熱を蓄えずに反射するため、涼しさを保つ。そのためきブドウが酸を保つことできる。また、河川に沿った南向きの斜面のため、空気の流れがよく、春の霜害の影響を受けにくい。結果として、高品質のシュナン・ブランが育つ。石英の区画には最高樹齢約80年のシュナン・ブランから、若いもので2024年に植えた若木まで幅広い樹齢のブドウが植わっている。他にもリンゴやオリーブの木が植えられている。「植物に多様性があって、庭みたいに楽しめたらいいと思っている。」ブドウはネイティヴセレクションでクローンに多様性を持たせている。シュナン・ブランの収穫は約1カ月にわたり、熟度に応じて4-5回に分けて手摘みで収穫を行う。ブドウの熟度が分かりやすいように短梢剪定。レミの畑作業は植樹から収穫に至るまで、ブドウの成長サイクルのすべての段階で細心の注意が払われている。「何よりもまず目指しているのは、長生きするブドウの樹で偉大なワインを造ること」と語る。冬には、樹液の流れを尊重した”不傷剪定”を実践。短梢剪定を基本とし、春の作業が最も重要であると考え、特に芽かきに注意を払っている。2度の作業を行うことで、病気を防ぎ、ブドウが最適な成熟条件で育つ目的がある。「この作業は、ブドウの樹が長く生きるためにも欠かせない工程。土壌の生態系にできるだけ影響を与えないよう、浅く垂直に耕作している。必要に応じてグリーンハーベストを行い、赤ワイン品種については早期に葉を落とす作業を徹底している。肥料は近隣の畜産家から提供される堆肥を使用し、計画的に施肥。収穫は全て手作業で行い、20 kgの箱で収穫することで、香りの新鮮さを最大限に保ちながらワイナリーまで運ばれるんだ」普段は物静かなレミだが、畑での作業について興奮気味に語る口調からは、自身の仕事への徹底的なこだわりと自信が伝わってくる。

「ワイン醸造が始まる前に最も重要なのは、ブドウを最適な成熟度で、病害が全くない状態で収穫すること。この段階で、ようやく畑での厳密で丁寧な作業が実を結ぶ。特に難しいヴィンテージでは、これが特に重要なんだ。私たちが望んでいるのは、しっかりと熟したブドウを、ちょうどアロマがピークに達し、白ワインでは糖と酸、アロマのバランスが取れ、赤ワインでは皮と種がしっかりと成熟した状態で収穫すること」そう語るようにブドウを完璧な状態で収穫するために同じ区画でも4-5回に分けて収穫を行っている。自分たちのワインの生産量を抑えていることで、ここまでの正確な収穫日に徹底できているという。徹底した畑作業とは打って変わって、セラーでは極力手を加えないようにすることを信念としている。「ワイン醸造において私たちが最も重要視しているのはアロマの純粋さとテロワールの表現」そう語る彼らは、収穫したブドウは圧力がかかりすぎないように小さな箱を用い、ブドウ圧送ポンプは使用せず、重力を利用したグラビティーフローで作業を行っている。発酵はすべて野生酵母で行われる。「自然な醸造にはリスクが伴うため、亜硫酸は慎重に、必要最小限だけ使用している。亜硫酸添加をしない生産者もいるけれど、僕たちは、揮発酸しか感じないような香りが失われたワインや、酸化が早いようなワインは望んでいない。健全なワインを造りたいんだ。」徹底した畑作業や完璧なブドウの収穫にこだわるレミだからこそ、”ブドウを活かす”ワイン造りへの信念が伝わってくる。

発酵終了後、長い熟成期間を経て自然な安定を得ることを大切にしている。「私たちはワインが気候の季節性を経験することが大事だと考えている。冬の休息と寒さが自然な清澄をもたらし、ワインは一切の清澄処理や濾過を行わずに仕上げる。ワイナリーでの作業は、基本的にワインを見守り、伴走することに他ならない。私たちにとってワインを作るのは、ブドウそのものの質であり、ワイナリーでの”レシピ”はない。ブドウの質とは、土壌、気候、そして畑での人間の努力によって生まれるものだと思う。」

DATA

造り手:レミ、ティフェン・プリヴァ

国/地域:フランス/ロワール

栽培面積:20 ha